Kindaichi Kousuke MUSEUM
【第1シリーズ】
犬神家の一族
本陣殺人事件
三つ首塔
悪魔が来りて笛を吹く
獄門島
悪魔の手毬唄
【第2シリーズ】
八つ墓村
真珠郎
仮面舞踏会
不死蝶
夜歩く
女王蜂
黒猫亭事件
仮面劇場
迷路荘の惨劇

横溝正史シリーズII
「女 王 蜂」

1978/08/12〜08/26
(全3回)
「女王蜂」イメージ 脚本:石松愛弘 監督:富本壮吉
配役
速水欣造:神山繁 / 神尾秀子:岡田茉莉子
大道寺智子:片平なぎさ / 多門連太郎:夏夕介
九十九龍馬:川合伸旺 / 大道寺槇:南美江
蔦代:岩本多代 /速水文彦:坂東正之助
姫野東作:田中春男 / 遊佐三郎:赤塚真人
日下部達哉:菊地太 / 大道寺琴絵:斉藤恵子
日和警部:長門勇 / 山本巡査:三谷昇

次々と起こる、凄惨な連続殺人。彼女は「女王蜂」なのか?

殿(けんいち)
断崖の上から、海にむかって花を投げる、寂しそうな憂い顔の女性・・・。
「横溝正史シリーズ」の第2シリーズで放映された「女王蜂」のオープニングです。
だれを偲ぶのか、ここからいきなり引き込まれてしまいました。その憂い顔の女性の名を、大道寺智子といいます。

ここで特筆すべきは片平なぎさ演じる大道寺智子の可憐さ、清純さ、可愛らしさ。
私は数ある智子のうちでも断然、片平なぎさ版智子を推します。あれが某TVドラマで、堀ちえみをイジメ抜いた「あの」片平なぎさか?と目を疑ってしまったほど可憐です。
「母親に似て、そりゃあ美しい女性です。」と義父の速水欣造が言うように、ホント奇麗。
金田一耕助が智子と初対面した際も「ほえ〜っ」て顔してたし・・・と本来の趣旨から外れましたね。失礼しました。
ようするに島の青年・三郎、速水文彦、多門連太郎。この男達が智子にお熱を上げるのも無理ないかな、と言いたかったんです。いえ、私でもお近づきになりたいくらいですもの。
しかし智子に近づいた男性は、みな不慮の死をとげるのです。彼女は女王蜂なのか・・・?。
智子の前に謎の老人が現れます。このアヤシイ老人に智子は、20年前の父の死が事故死ではなく、実は殺されたのだと聞かされます。智子にとっては、かなり衝撃的だったことでしょう。
アヤシイ、実にアヤシイ。私も最初はその程度にしか考えなかったのですが、この老人、実はかなり重要なポイントとなっております。この老人は一体だれなのか?どうして20年前の真実を知っているのか?これについてはラスト近くで明かされる、意外な事実があるのですが、おっと、その先はナイショです。ふっふっふー。

智子に近づく文彦、かなりあからさまでみっともない。なんていうか、お前が一番に殺されるんじゃないのか?とか思ったんですが、実は最後まで生き残る。この理由も最初は「?」だったのですが、殺されるわけがない理由があったんですね。智子に近づいた男はみんな死んだのに、なぜ?どうして?いや、コイツまで殺したら、その犯人は異常という言葉しか見つからないサイテー人間ですね。それも観てのお楽しみ。
この作品の犯人は、かなり自己中心的です。他の作品の犯人とは違って、運命に翻弄されてるわけでもなく、かといってこうするよりしかたなかった、という動機とは全然違います。とにかく自分の欲望、エゴのみで殺人を繰り返す。私は「横溝正史シリーズ」の犯人のなかで、この犯人て最悪なヤツ、と思うのですが。

私の好きな日和警部はどうか?というわけで「日和・チェーック!」
注目すべきは駐在の山下巡査が金田一耕助を紹介するシーン。

山下「警部はご存知ありませんか?獄門島に、八つ墓村の難事件を解決された日本一の探偵さんであります。」
日和「んなこと言ったらお前、わしかて八つ墓村に、悪魔の手毬唄の事件で相当ならしたもんじゃ。日和警部を知らんか?お前。」
山下「日和警部・・・?聞かんなあ。」

想像通りのナイスつっこみ、そして期待通りのお約束なオチ。
さらに日和警部のいでたちは探検家ルック。なにがなんだか・・・。もう、好きだなあ。ギャグ精神は健在、エスカレート、ヒートアップするのですが、なんとも味のある存在には変わりなしです。そういえば話は変わりますが「三つ首塔」で「きっちゃてん!(喫茶店)」なんてベタベタなことも言ってたっけ・・・。日和警部をこよなく愛する私には、とてもたまらんわ!という状態ですね。これは演じる長門勇さんの演技力も大きなウエイトを占めてるんですが。

ラストはとても悲しい。ネタバレにならないと思うので書きますが、智子の身辺の人物たちは、その殆どが死んでしまいます。これから智子はひとりぼっち。ですが島に残ることを決意します。
金田一耕助が言います。
「あなた女王蜂なんかじゃないんだから、早く元気になってあなたを愛した人達を安心させておあげなさい。でなきゃ彼らも浮かばれないな。」
耕助と日和が去ってゆく。智子が微笑み手を振る。悲しいけど、ちょっとだけ希望の持てるエンディングです。きっと智子も強く、明るく生きていくことでしょう。

さて最後になりますが、作品全体のイメージはというと、第1シリーズの特徴だったおどろおどろしさに関しては、ちょっと物足りないかもしれません。どちらかといえば、サスペンス色の強い2時間スペシャルの世界に近いでしょう。
ストーリーも簡略化・改ざんされています。毛糸玉の秘密は? それに「あの人」が死んでしまったら、だれが智子を守り、支えてくれるの?などなど原作を知っている人には、不満が残るかもしれません。これは劇場版との差別化を図ったものなのでしょうか。実は私も少々残念だったりして・・・。
でも、ちょっとだけ見方を変えてみませんか?
私は、こう思うのです。なまじ原作と比較してしまうから素直に楽しめなかったんだな、と。はじめから全くやる気のなさがありありと判ってしまうものでは、見ているほうも困ってしまいますが、実はこの作品は原作を知らない人なら十分楽しめる水準のものではないかなー。勿論「好き・嫌い」的な好みの問題はありますが。
私的には、比べてみろと言われたら原作や劇場版に軍配を挙げざるを得ませんが、でもでも、私にとって「愛すべき1本」であることには変わりありません。そんな作品。それがこの「女王蜂」なのです。
(C) 2003 NISHIGUCHI AKIHIRO
(C) 1998 HONDO KENICHI