【第1シリーズ】
犬神家の一族
本陣殺人事件
三つ首塔
悪魔が来りて笛を吹く
獄門島
悪魔の手毬唄
【第2シリーズ】
八つ墓村
真珠郎
仮面舞踏会
不死蝶
夜歩く
女王蜂
黒猫亭事件
仮面劇場
迷路荘の惨劇

横溝正史シリーズ
「三 つ 首 塔」

1977/05/28〜06/18
(全4回)
「三つ首塔」イメージ 脚本:岡本克己 監督:出目昌伸
配役
上杉誠也:佐分利信 / 佐竹建彦:米倉斉加年
宮本音禰:真野響子 / 高頭俊作:黒沢年男
佐竹由香利:大関優子 / 鬼頭庄七:小池朝雄
島原明美:三原葉子 / 古坂史郎:ピーター
志賀雷蔵:小松方正 / 法然和尚:殿山泰司
笠原薫:岡尚美 / かね:野村昭子
日和警部:長門勇 / 等々力刑事:早川保

「三つ首塔」評

ぼく、金田一耕助です。

いやあまいりました・・・、実はぼくが大昔に出演したドラマについて感想を書いてくれってある人から依頼されましてね。
覚えてはいるんですよ、どれも克明にねでも・・・、どの事件について書くかで迷ってるんですよ。
それでね、いっそのこと一番ぼくの影の薄かった事件について書こうかと思いましてね「三つ首塔」・・・、この事件を選んだんです。

とにかく奇妙な事件でして、ぼくの手がけた中じゃ異色なものになるんでしょう、いわゆるエログロっていうか・・・。
遺産をめぐる連続殺人事件って点じゃあ他の事件と似た部分もあるんですが、きわめてぼくの出番が少ない。
高頭五郎と宮本音禰っていう男女がいましてね、全編を通してこの2人のサスペンス劇場なんですよ。
彼らは殺人現場の第一発見者だったり有力なカギを握っていたのは間違いないんですが、黙ってるんですよ、理由があってね。
ぼくは終始けむたがられる存在でしてね、高頭君なんか「金田一耕助に気を付けなきゃ・・・警察よりあの男が怖い」なんて音禰さんにもらしたそうで・・・、まあこのことについてはぼくにとっては光栄なことなんですがね。
始めはこの2人には振り回されました。
音禰さんに男がいるってことはうすうすわかってたんですがね、それが誰だかはさっぱりで。
だからぼくもね、けっこう大胆なことヤリましたよ、日和さん達に尋問されて警察に連行される寸前の音禰さんを逃がすために、上杉邸のブレーカーを落としてわざと停電させたりね。
きっとその男のところへ音禰さんは向かうと思ったんですがね・・・ところが、お恥ずかしいことにひじてつ一発であえなく音禰さんに逃げられてしまう始末でしたよ、あっはっはっは。
しかし日和さん、何も触れなかったけどこれたいへんな捜査妨害ですよね、ぼくも若かったなあ。

ところでみなさん、10億円ってピンときます?
ちなみに原作では100億円なんですがね、どっちにしろ莫大な金額に間違いない。
そんな金がからんでくれば誰でもおかしくなるはずだ、一人や二人くらい人が死んでもおかしくない。
この10億円というのは佐竹玄蔵という老人の遺産なんですが遺言状には、この玄蔵老人がかつて人を殺めその罪をきせられて処刑された人物の子孫と自分の子孫9人の名があげられていた。
まあ罪滅ぼしの意味があったんでしょう。
本来遺産を受けるはずだったのは高頭俊作と宮本音禰の2人だったんですが・・・結婚を前提という条件でね、ところが高頭俊作がしょっぱな死体で見つかりましてね、代わって残りの8人で遺産を分配することになった。
そんなとほうもない遺産を8人の人間が等分することになった、しかも人数が減ればそれだけ分け前が多くなるというオマケ付きのまさに迷惑な遺言です。
この8人が・・・、いや音禰さんを除いた7人というのがどうもうさんくさい人物ばかりでしてね、黒川弁護士の事務所で一同集まりまして・・・あ、その席にはぼくも同席したんですが、事情と金額を聞いたときの彼らの目の色の変わりようといったら・・・。
たしか古坂君でしたか、「みんな死んで一人生き残ったら一人で10億いただけるんですね」というようなことをポツリと言ったんです。
さすがにぼくもゾクっとしましたそんなことも現実に有り得ると・・・、そう感じたのを覚えてます。
ぼくだったら、そのう・・・素直に1/8の分け前をもらってね、ほら事務所の家賃滞納で追い立てをくらう直前だったし、頼みの綱のぼくと同業の岩下三五郎、彼には貸しがあったんですけど第一回で殺されちゃったでしょ、返してもらう寸前ですよ・・・あのときゃまいったなあ、しょっちゅう電気とか止められちゃう生活なもんだからね、つまりぼくにとっては1/8で充分過ぎるほど満足なわけですよ。
しかし、彼らはそれに甘んじなかった。
少しでも多くの金額を手にするためにやっきになった。
まあ蓋を開けてみれば、この事件の犯人の動機はそれとは違うところにあったんですけどね・・・。

しかし、音禰さんという女性は綺麗な人だったなあ。
清楚で純粋で汚れを知らない、でもねそんな女こそ一番恐ろしい。
音禰さん徐々に高頭君に魅かれちゃいましてね、まあ、今までに見たこともないような汚い世界をいっぺんに見せられ死体もたくさん目の当たりにして、守ってくれる男に気が向くのは当然と言えば当然、そして一途なだけに彼の言う通りにするんですよ。
実はぼくは彼女とのカラミはほとんどなかったんですが、聞くところによるとずいぶん色っぽい服装されてたようですねえ。
僕もね、佐竹由香利がサドマゾショーやってるクラブに行ったときに・・・、そうそうあそこは男女同伴じゃないと入れないんでしかたなく事務所のおばちゃんといっしょにね・・・、いやそのとき音禰さんをチラット見かけましてね、あのときは確か黄色っぽい・・・そのう、なんていうんですかマントのようなポンチョのようなもの、ぼくファッションはまったく苦手でしてねえあっはっは、それでね、その下には黒いレオタードのようなものを着てましてね、網タイツで。
いやあ、あれちゃんと拝見したかったですよ、実に魅力的、官能的スタイルだったんでしょうねえ。
しかし、ぼくの事務所のおばちゃん見ました?あのカッコウ。
あれじゃあピエロかチンドン屋ですよ、まさに雲泥の差、月とスッポン!
ぼく?ぼくは結構イカしてましたよ!・・・たぶんね。
まあ、そんなステキな女性である音禰さんをなんとかモノにしようとする男達もいたんです。そりゃそうですよ!
あの美しさだ、おまけに遺産付きですしね。
それが志賀雷蔵・古坂史郎だったんですが、おかげで音禰さんこの2人にもさんざん引き摺り回されましてね、そのとき死体を3つも見てしまうはめになる。
まさにこの遺言は彼女にとっては大迷惑なものだったんですね。

しかし、改めて思い返してみると・・・・、ぼくの推理もかなりやばかったなあ、果たしてほんとにあれで良かったのかどうか。
最初の高頭俊作と岩下三五郎の殺しはまあいいとしましょう、あと法然和尚と鬼頭庄七の件は実際に殺人場面が放映されたしね。
でもその他の殺人についてはチョット・・・、実はあまり自信がないんですよねえ・・・。
1件についてはぼく、まるで触れてないんです、日和さんもそのことについちゃ一言も言わなかったなあ。
まあお決まりの犯人自殺という結末だし、最後の三つ首搭の大炎上シーンね、あれに免じて許してやってください!ね。

すごかったでしょ、あれ金かかってましたよ。今やってる2時間スペシャル、あれとは比べ物にならない力のいれようだ。
実物の二重搭を造りましてね、な、なんとあれ650万かけて建てたんですよ!
それが一瞬にして灰ですよ、まったく。
いやあ、やっぱりあれくらいやらないと視聴者は納得してくれないんですよ、でもね、ぼくとしてもやはり特撮じゃなくってね、そのくらいやってもらえると気持ちいいもんですよ、主役冥利につきるというか。
だからぼくのあの場面での演出さえてるでしょ?いままで後ろにまわってた分もあって一気に出し切った感じですかねえ。
やっぱりねぼくは主役なんだし、キメるとこはわかってるつもりなんですよ。
それから、ぼくがよくやる作戦、あれもよかったでしょ?
搭が燃える前にちゃんと中から重要なものは持ち出してある。
人が悪いといえばまったくその通りなんでしょうけどね、だって誰にも言ってないんですから、そして程なく焼け落ちた頃を見計らって高頭君にそれを差し出したわけですよ。
いつもねあのタイミングに苦労するんです、そしてあれこそがぼくを印象付ける手段なんです。
高頭君も「ありがとうっ!」って心底礼を言ってたでしょ、作戦成功ってわけですよ。
しかしあのとき、高頭君燃えてる搭に走って行こうとするんで焦りましてね、あやうくタックルして止めましたけど、あのまま行かれてたら逆にぼくの面目は丸つぶれでした。
彼も必死だったんでしょうねえ、あれによって自分と音禰さんの運命が決まるわけですから。
まあぼくにとっては万事うまくいってよかったと思ってます。

それにしてもいまだに思い出せない一番の謎があるんですが。
あの事件のぼくの依頼者っていったい誰だったのかなあ・・・・?
(C) 2003 NISHIGUCHI AKIHIRO
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